睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、まずは問診により、いびき・無呼吸・日常の睡眠状態・鼻疾患や他の合併症についての確認を行います。睡眠中の様子はご本人では自覚しにくいため、ご家族や同居者からの情報が参考になります。問診の結果、検査が必要と判断されれば、以下の方法による検査を行います。
【ファイバースコープ】
鼻や喉に病気がないか、扁桃腺や舌の付け根が肥大していないか、など気道を塞ぐ要因についてファイバースコープを用いて検査します。
【CT・レントゲン】
いびきの原因の1つに副鼻腔炎が考えられます。副鼻腔炎が疑われる症状の方にはCTあるいはレントゲンの撮影を行い、副鼻腔炎の有無を検査します。
【スクリーニング検査(簡易検査)】
スクリーニング検査は、自宅で睡眠中の状態を調べる簡易検査です。
指先にセンサーを装着することで、血液中の酸素の状態と脈拍数を測定し、睡眠中の呼吸状態や心拍数、酸素飽和度を診断します。普段の睡眠に近い、リラックスした状態で就寝することが可能です。
【鼻腔通気度計】
鼻腔の空気の通りやすさを測定する検査です。鼻閉など、患者さんの訴える症状に応じてこちらの検査を行う場合があります。慢性副鼻腔炎(ちくのう症)や鼻中隔湾曲症などの疾患が見つかった場合は、その原因となる病気を治療します。
<検査結果>
睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸の合計を「無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index: AHI)」と呼び、その数値に応じて診断を行います。
具体的には、AHIの値が
5以下の場合:正常範囲内(睡眠時無呼吸症候群ではない)
5~15の場合:軽症
15~30の場合:中等症
30以上の場合:重症
と診断されます。
20以下で生活習慣の改善指導、20~40の方は再度「精密検査」の実施、40以上はSASの症状が明らかなため、CPAP等の治療に移ります。
尚、スクリーニング検査は、患者さんご自身で装置を取り付けて実施するため、AHIの値にずれが生じる場合や、1回の記録では判断が難しい場合があります。
スクリーニング検査のみで睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断されることもありますが、より精密な検査が必要だと判断された場合は、「終夜睡眠ポリソムノグラフィー検査(PSG検査)」を受けていただくことになります。
【PSG検査(終夜睡眠ポリソムノグラフィー検査)】
PSG検査はSAS検査では最も精密な検査方法になります。
指先に血液中酸素濃度と脈拍数を測定するセンサー、胸に呼吸の状態をみるバンド、鼻に呼吸の状態をみるチューブを装着します。睡眠中の無呼吸の回数を調べるほか、脳波、筋電図、心電図、酸素飽和度などから睡眠パターンを詳しく分析することが可能です。
測定により、睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸の合計値AHI、SASの種類(閉塞性・中枢性)、酸素の低下状態、睡眠の質(睡眠の深さ・分断の有無)、不整脈の有無、その他の睡眠障害の有無について診断します。
スクリーニング検査よりも、総睡眠時間が測定できるため、AHIを正確に測ることができます。その他にも検査データから睡眠の質や無呼吸の種類、そのほか睡眠を妨げる症状などを確認します。
<精密検査結果>
AHIが20以上の場合:CPAP治療の保険適応条件が満たされ、すぐに治療が始められる
AHIが20未満の場合:CPAP治療以外の治療法(マウスピースなど)を検討する、または治療の対象外となる