■ 子供のいびきが気になる方へ
一般的に日本人男性の9%、女性の3%がSASと言われています。睡眠中のいびきや無呼吸は30代~60代の男性や閉経後の女性に多い傾向にありますが、お子さまでも睡眠中にいびきや無呼吸になる場合があります。いびきをかいていたら良く寝ているように思われ見過ごされることが多いのですが、それは睡眠時無呼吸症候群(SAS)という病気のサインかもしれません。
大人の場合は、「10秒以上の呼吸停止が、一晩(7時間の睡眠中)に30回以上、または1時間に5回以上ある」と定義されておりますが、小児の場合は、「無呼吸時間が10秒に至らなくても、2回分の呼吸停止があれば無呼吸と診断できる」とされています。
■ 子供のいびき・無呼吸の原因
大人の方のいびきの原因は肥満などによる生活習慣による影響が大きいのですが、小児のいびきの原因として多いのが、鼻の一番奥で喉との間にあるリンパ組織のアデノイド(咽頭扁桃)や口蓋扁桃(いわゆる扁桃腺)が成長と共に大きくなることで空気の通り道が狭くなり、いびきや無呼吸になることがあります。
また、花粉症などアレルギー性鼻炎による鼻詰まりや長引く鼻かぜによる副鼻腔炎(蓄のう症)が原因になることもあります。
■ 症状といびき・無呼吸が子供に与える影響
アデノイド肥大や口蓋扁桃肥大はお子様の成長期に起こりやすく、この時期に無呼吸によって眠りが浅くなると成長ホルモンの分泌が悪くなり、お子様の成長が遅れるだけでなく、夜尿症の原因やイライラしやすくなったり、集中力の低下など精神面にも悪影響が出るといわれています。
■ 子供のいびき・睡眠時無呼吸症候群の検査診断
まずは、詳細な問診や内視鏡検査(ファイバー)やCT、副鼻腔レントゲンなどを使い、いびきや無呼吸に繋がる疾患が起きていないか原因を調べます。その後、夜寝ている時の睡眠状態を調べるための検査をご自宅で行っていただきます。一般的には病院など入院施設に入院する必要がありますが、当院では自宅で検査可能な機器を準備しています。
なお、お子様の睡眠時無呼吸の有無の判定において、睡眠時の動画撮影が重要となりますので、お子様が寝付いていびきをかいている時に、なるべく仰向けかつ上半身を裸にして、首からおへそ付近までをスマホなどで5〜10分程度動画撮影し録画保存して、後日診察時に担当医師に供覧してください。
■ 子供のいびき・睡眠時無呼吸症候群の治療法
検査等の診断により、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などが原因の場合は、点鼻薬や抗アレルギー薬、抗生物質、排膿促進剤の内服などで症状を改善させたり、軽減することで問題が解決する場合もありますので、軽症の場合は内服薬や鼻処置、ネブライザーなどで経過観察を行います。
上記治療で改善が認められない場合や重症の場合でアデノイド肥大や口蓋扁桃肥大が原因の場合は、全身麻酔下での手術による摘出を検討していきます。その際は、手術が可能な当院の連携病院へご紹介させていただきます。お子様の多くは手術療法でほぼ改善します。
しかしそれでも改善しない場合や、顔面の形態異常など手術が困難な場合はCPAP(シーパップ)と呼ばれる鼻にマスクを装着していただきマスクから空気を機器で送り込むことによって呼吸を促す治療法を行うこともありますが頻度としては少ないです。
■ 子供のいびき・睡眠時無呼吸症候群について最後に
お子様がいびきをかいて寝ているのはドラマや漫画の影響なのか「元気で健康な証拠!」との誤解がまだまだありますが、異状な状態です。
感冒時に一時的に認められるだけなら様子を見ても問題ありませんが、1ヶ月以上長期にわたる場合は、お子様の心身の成長に大きな障害を与える可能性がありますので、いびきを認めたらなるべく早期に耳鼻咽喉科専門医を受診してください(※かかりつけ小児科では精査が困難です)。